【前編】AI作曲の展示にチャレンジ! at Maker Faire Tokyo 2025
necobit は、ここ2年ほど、人間の操作またはMIDI自動演奏でスネアドラムを鳴らすスネアねこびっとくんを主体としてさまざまな場所で体験型展示をしてきましたが、今回はガラっと変わってローカルLLM補助による作曲をするというソフトの比重がとても大きな内容の展示になりました。
📝ローカルLLM:ネットを使わずにローカル環境(例えば目の前のPCとかの中)で動くLLMのことです
流行り?のAIで自分なら何を作るか
春先に新しくローカルLLMが動かせるスペック盛り盛りMacを買いました。
そしてじっと考えるそれを利用したコンテンツ、しかもAIエキスパートでもなんでもないnecobitが作れて、オリジナリティのある内容…💭
necobitと言えば「音楽×電気」。それにAI成分を足して………と考えると、 AI作曲的な内容を思いつくのは自然な流れと言えるでしょう(?)
指示して眺めるAI生成を、もっと体験にしたい
AIで何かを生成するというと「〇〇で**な▲▲を作って?」指示を出して待つ、みたいな手順になりがちですが、展示でやるならもっと人間が入り込める余地が欲しいし、結果の達成感を華やかにしたい…💭
✨💡メロディは体験する人が弾く、伴奏はAI+かんぷれの併せ技で弾く‼️
Maker Faire Tokyo 2025 展示 AI作曲ねこびっとくん仕組み説明パネル より
メロディは体験する人にドレミを弾いてもらいます。 あえて鍵盤ではなくボタンで。ここにカラクリがありますが後で説明します。
かんぷれ とは、コード進行をディグリー(度数)に置き換えたボタン操作で誰にでも簡単に演奏できるように開発された楽器ガジェットです。ユーザーエディットもできる自動伴奏機能、MIDI制御や外部スイッチなどで遠隔操作可能など、かなり多機能なところも魅力です。
AIが音楽を作ると言うのはロマンがありますが、SunoAIみたいに大量の学習データを元にガチャ的な生成波形をポン出しするのは、AI使うだけのnecobitには難しすぎるのと、音楽への介入の余地がないのであまり面白くない。 じゃあどうやってAI生成の音楽を作るのかを考える...というかここはひらめいたので深くは考えていないです。
そしてAIに「コード進行」を考えさせる。 音楽の全てをAIに考えて作ってもらう場合は、それらを演奏できるシステムを用意しなければならないし、あまり良い結果のイメージができませんでした。
コード進行だけに絞ると、例えばLLMに「ロックのコード進行考えて」って聞くとかなりしっかり考えられたコード進行を出してくれます。さらに「一つ前と違うバリエーションに」みたいなのも言葉で伝えるだけで簡単です。
メロディのバックには伴奏がつきもの。その伴奏のもととなるのが「コード(和音)」であり、コードの流れを示す「コード進行」です。
そこに体験する人のメロディがのれば、それはもうオリジナル曲になるのではないでしょうか。
🤔
勘の良い人は気がついたかもしれませんが、この展示でAIのやっていることは作曲(Compose)ではなく編曲(Arrangement)です。だがしかし待ってほしい。「AI『編曲』ねこびっとくん」だとぱっと見のわかりやすさがガクンと下がってしまうとは思いませんか? そんなわけで「AI『作曲』ねこびっとくん」が生まれたわけです。
これで構想はできました。 しかし当然のように課題は山積みです。
音楽的破綻させないための様々なカラクリ 前編
展示全体の流れをおさらいすると…
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体験者がメロディを入力する
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ローカルLLMがコード進行を考え、ジャンルを選択する
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1,2を合体
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メロディを自動演奏グロッケンが
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他のパートをかんぷれが演奏する
実際の演奏の様子はコチラ👇ポストの動画でご覧ください👀
AI作曲ねこびっとくんは優等生で、何度やってもそつのないコード進行を作ります。そんなおまえに👨🦲俺がした。稀にへんてこりんな結果になるのも面白いかもしれませんが、たまたまそれに当たってしまった来場者の体験として「楽しかった!」にならない場合もあるし良くない。
さあ、ネタバレ暴露㊙️AIの出る杭を打っていくnecobitカワヅの対策を披露します。
音楽的に破綻してないように聞こえるため、入力されたメロディに合わせた音楽を考えているように感じた人もいるでしょうし実際そう言う説明もしたような気がしますが、
AIの作るコード進行は、入力されたメロディを一切考慮していません
そんなそれぞれ勝手に作ったメロディとコード進行を突き合わせたら、噛み合わずに音楽として成立しない確率のほうが高いに決まっているのですが!
それを防ぐためにさまざまなカラクリを仕込んだのです👨🦲ニヤリ✨絶対ハズさない作曲法とも言える…ここからは音楽用語の個別解説・注釈は省きます(全体が長くなりすぎるので)謎の言葉は調べながらお読みください。
下ごしらえ
キー(調)はCメジャー(ハ長調)限定でやります。いわゆるドレミファソラシドを基本としたキーです。こればっかりはあらかじめ合わせておかないと音楽にならないので固定で。
使えるコードにもメロディにも縛りを
🪢AIが生成するコードは、ダイアトニックコードに限定。ただし修飾として7(セブンス)、M7(メジャーセブンス)、sus4(サスフォー)コードも使用できる。
この縛りをCメジャーのキーでやると、基本的には、ピアノでいう白鍵しか使わない(シャープ・フラットを使わない)コードしか生成されなくなります。
🪢人間が入力できるメロディは、「ドレミソラドレミ」の8音のみとする。
ファは無いの?シは無いの?と思ったあなた!鋭い!これはCメジャーペンタトニックスケールです。ペンタトニックスケールに使われている音だけでメロディを作れば、なんとジャンルが変わっても知らない曲にいきなり飛び込んでも、他とぶつかりにくい要素の音だけで構成されているのでなんとかなってしまう便利なスケールです。
この2つの縛りが組み合わさる事で、音楽的な破綻をほぼ防ぐ事ができます。
デメリットもありますよ
破綻がない分、曲調がシンプルになりがちなので、R&Bやハウスなどオシャレな感じの音楽にはあまり向きません。
それでも、今回の展示 AI作曲ねこびっとくん は、R&Bもハウスもジャンルとしては準備しました。ジャンル選択は完全ランダムなので、それらに当たった時は、きつい縛りの中でLLMさんが頑張ってR&Bっぽく!ハウスっぽく!コード進行を考え、なかなかそれっぽい音楽になりました。
ポストの動画では、画面にコードネーム表記でコード進行も表示されています。聞きながら見てみてくださいね。人間とはちょっと違った感じでなんとかどうにかこうにかしているの…お分かりいただけましたでしょうか。
ちなみにこのシンプルに持っていく縛りをやりすぎると「🤖💢じゃあどうすればいいんだよ‼️」ってなってAIが発狂してめちゃくちゃなコード進行が生成されます。 この辺りのハンドリングはまだまだ考える余地ありまくりです。面白いですね。
それでは次回は、AIが考えたコード進行をどうやって自動演奏に持っていくのか? お楽しみに〜〜
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