『KORG Gadget だけで作曲・編曲どうやった?』
KORGのオールインワン音楽制作アプリ KORG Gadget だけ でつくる作曲コンペ GadgetSonic 2021(Gadget-Junkies.net.主催)に参加し、
🌴 GREEN FIELD 🌴準グランプリSONIC OF THE YEAR を受賞しました。
曲はコチラ
まるまる一曲をスマホ/タブレット用アプリで作る、DTMはずーっとパソコンだった身としては初体験です。
使い方わかんないところからいきなりイベントに討ち入り…無謀かと言われるとそうでもないと思う。結果に関係なくオススメ行動ですよ!
締め切りがある・同じことをしてる人たちの存在感で、自分の「これをこうしたい」を意地でも引っ張り出して完成に漕ぎ着け、満足しましょう☺️
出来具合よりも、経験。まずはそれからだ。
まずはイマドキのDAWを知る
5月のDIY MUSIC on DESKTOP 2021 で KORG Gadget の音色は使用。しかしシーケンサー部分は全くノータッチ。説明書を読みながらいじって何ができるのかみてみよ…。
テンポの揺らぎが半自動で作れる
👍最も驚いたのはココ‼️これならどんなジャンルでもできるじゃないの。
KORG Gadget 2 iPad版 シーン詳細設定画面
白吹き出し内の78.0=全体の基本テンポ値です。これとは別に、シーンごとにテンポ変更ができる。さらにシーンとシーンのテンポの差を自動で滑らかにするスムースON/OFF設定が便利すぎた☺️
画像右上の黒い四角、拍子設定が15/8ですがトリッキーな変拍子曲ではなくですね…
この楽譜の最初の2小節を八分音符で分割したためです。
4/4拍子2小節 = 16/8拍子1小節 として、赤マーカーの15/8拍子と青マーカーの1/8拍子のふたつのシーンに分けます。最後の八分音符ひとつでテンポを大幅に落とせば、タメてから次のフレーズへという揺らぎが作れます。
楽譜の色分けはKORG Gadget上でこのようになっています。
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🟥シーンC3 :15/8拍子 テンポ76 スムースON
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🟦シーンC3copy :1/8拍子 テンポ56 スムースOFF
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🟨シーンC4 :5/4拍子 テンポ86 スムースON
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🟩シーンD1 :4/4拍子 テンポ82 スムースON
スムースON設定にしておくと、次のシーンのテンポ数値へ向かって自動で滑らかに速度調整してくれます。OFFだとパッとテンポが変わる。
再生してみて、変化が速すぎたらテンポの数字を小さくすればいいし遅すぎたら大きくすればいいし、聞いた感じで直感的調整できるのはとても楽☺️
例えばどんどん遅くしていくところは、1小節を1拍ごとにシーン分けしてしまいテンポ数値を80・70・60などと大幅に入れてスムースONにすれば、あっという間に自然なリタルダンドが作れるという………便利すぎる。
ちなみに自分で全部テンポを入力して揺らぎを作るパソコンDAWはこんな感じ。
めんどくさいのは確かですが耳コピなどで原曲と完璧に合ったテンポ揺れを作ることもできます。
手弾き入力の味が残せる
スマホ/タブレットアプリ(なんとNINTENDO Switch版もある)だから、拍にピッタリタイミングの音しかできないかな?と思ったら大間違い😞💦
グリッドに吸着しない(クオンタイズオフ)設定ができる〜〜〜〜
KORG Gadget 2 iPad版
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濃い白の縦線=小節線
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薄い白の縦線=1拍ごとの線
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黒い縦線=グリッド(ここでは16分音符ごと)の線
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オレンジの横棒=ピアノの音が鳴っている長さ。鍵盤を縦に置いたのと同じで上に行くほど高い音。
……👀このピアノ。タイミングがグリッドに合ってないの、お分かりでしょうか。
駆け上がるフレーズはちょっと先走ってたり、メロディにタメが入ってたり…人が自然にそうなっちゃう動きを残しています。
全トラック(スネアドラムロール以外)を自分で弾いて録音入力。そして再生して確認しながらオレンジの棒のタイミングを、単なるヘタウマ味にならないように微調整。(生演奏に自信のある人はそのまんまでもいいと思いますが)
グリッド線を表示しながらグリッドに吸着しない編集は、ジャストよりどれくらいずらすか目と耳で確認できる。とても作りやすかった☺️
指やスタイラスで編集するのもパソコンDAWとの大きな違い。細かい数値データで知りたい!と思うこともありましたが、そこはアプリのデメリットに感じませんでした。
パターンをループする
いままで使ってきたパソコンのDAWは、例えるなら無限に横に長いスコア楽譜。
Digital Performer 10 Mac版
ドラムが1小節パターンの繰り返しなら、繰り返したい分だけ自分でコピペ…でした(Digital Performer 10 以降はクリップウインドウ機能が追加されています)。
KORG Gadget で同じようにドラム・ベース・リードの3トラックでやってみると…シーンAに、ドラム1小節・ベース2小節・リード4小節のパターンを作れば、
KORG Gadget 2 iPad版
ここでの最長=リードトラックの4小節を再生する間、ドラムは1小節×4回・ベースは2小節×2回、自動でループしてくれる。シーンAが再生し終わったら続けて次のシーンBが再生されます。
トラックごとに異なる拍子でループできるということは、テキトーにカオスなサウンドを鳴らして遊んでいるうちにカッコイイポリリズムを発明してしまう可能性さえある💡
また、4拍子の曲でドラムだけ3拍子なんてのを作りたい時も、1パターンだけ作ればループで帳尻合わせてくれるので、創作思考が作業で薄れてしまうこともない。
直感的に「こんなことできるかな」が作品として形になりやすく(作曲未経験でも!)、また綿密に計算しながら組み立てていくにも作りやすいシーケンサーなんですね。進化してるんだな〜…。
と、ここまで分かったところで脳内に音楽が湧いてしまったので曲作りに移ります。
メモでも鼻歌でもなんでもいいから出しておく
湧くときは完成形の音楽が鳴るタイプです(皆様はどんなタイプです?)。でもそれを現実の音程や音色に置き直すのは、針穴に糸を通しそれで大物を釣り上げる🎣とでも言いましょうか。
ねこびっと作 ♪色泡のはじけ消えるや遠花火 構想楽譜
ピアノで始まるのでソロ部分は(実際自分で弾ける)ピアノ譜、他の楽器が混じってくるところからはメロディとコードネーム記譜。後半どんどん省略した書き方になっていくのは、ここまで釣り上げておけばもう忘れない🐟ということで…。
脳内に完成された音楽が鳴り響いたところで、コーヒー淹れて戻ってきたら消えちゃったなんてことはよくある話。フワフワした状態をスケッチしておくのはとても大事です。音楽に限らずものづくり全般に言えることですね。
こんな感じ〜といった文章メモでも良し、鼻歌録音でも良し、カタチはなんでもいいと思います。出すのが大事。もちろんいきなり KORG Gadget など最終的に使用するツール上で作り始められればなお良しでしょう。
骨組みを固めていく
曲の全体構成は、
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大事なところを濃縮したイントロ
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メインテーマ(Aメロ)
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浮遊感なつなぎ(Bメロ)
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サビテーマ
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メインテーマを濃縮したエンディング
ねこびっと作 ♪色泡のはじけ消えるや遠花火 テーマメロディ譜
上段=メインテーマ・下段=サビテーマです。このふたつが、その都度拍子やコード進行を変え繰り返し出てきます。
1.大事なところを濃縮したイントロ
冒頭-1:10 はじめのピアノメイン部分はイントロ扱いです。いきなりメインテーマを出しサビテーマに続けてしまう。一般的な作曲セオリーとしてコレはどうなんだろう???先に手の内を見せて後でまた出てきた時に馴染みが増せば…という意図。
☺️追加音色 Salzburg のピアノ。セールの時に買っといてヨカッタ。
2. メインテーマ(Aメロ)
1:10-1:42 メインテーマの繰り返しではありますが、イントロのピアノよりも腰を据えた編成(チェロ・ピアノ・ベース)と拍子とコード進行に変えています。それと、アンサンブルの「間」の空気も意識。
ねこびっと作 ♪色泡のはじけ消えるや遠花火 Aメロ譜
コード進行は特に前半でファの音を軸というか芯のように使っています。
メロディに充てたのは、管弦打楽器からシンセまでド定番パックPCM音源 Marseille の STRINGS QUARTET 音色。
一聴、パッとしない印象の音色なのですが…このテーマメロディをまあ実によくうたう☺️ロボットや機械が物理的に(かつ主体的に)音楽表現をするやつが好きでして、コレはソフトウェアシンセだけどその感じを見たね🤖🎶👀
3. 浮遊感なつなぎ(Bメロ)
1:38-2:04 浮遊感と言いつつ…発車するように場面が動くのはこのコード感が出てきた時、としています。イントロからAの遷移にも同じ色調を挟んでいます。
また、サビテーマの「ファソラシ♭ド〜」(※テーマメロディ譜画像参照)。単なる音階登ってるだけメロディですがド〜が伸びている下でコードが移り変わる色味がとても気に入り、ここのBメロにも似た音形を多用。
4. サビテーマ→ 5. メインテーマを濃縮したエンディング
2:04-End Bメロ最後でヘ長調(F)から変ホ長調(E♭)に転調。コード進行は4小節パターンの繰り返しで進んでいきます。
ねこびっと作 ♪色泡のはじけ消えるや遠花火 サビ譜
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A♭M7(9,13)
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Cm7(9)
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D♭M7(9,13)
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E♭M7(9)
この4つのコードにはどれも「ミ♭」と「シ♭」が含まれています。D♭M7(9,13)の出てくる小節ではメロディに「ソ」を含むので、このサビはワンコードでずーっとE♭でもいけます。
曲を通してコード進行をしつこく共通音で繋いでるの、作曲時は意識してなかったのですが後々考えると💭…🎇どこから見えても打ち上げ花火の下には水平線があるから🎆…なんだろうなー。
ハ長調に転調したエンディングは、白鍵しか弾かないピアノソロにうっすらと宇宙的シンセ音色パック Lisbon を重ね、メインテーマを1オクターブずつ降りてくる繰り返し。音の高さだけでも遠近感が描けるのではという発見。
………ところで、もしピアノが黒鍵白鍵色分けなく弦楽器の様に全ての音が同列で並ぶ楽器で基本はドの音・ハ長調じゃない世界だったら、何もかもから解放される和音はどれになるんでしょうね???
音色選び・音色いじり・ミキシング
ピアノで始まってピアノで終わる曲になったので、まず88鍵の電子ピアノで弾いて作ってピアノパートだけを楽譜に起こして、それをKORG Gadget に入力。という方法にしました。
この時点でテンポ揺れも入ってます。これを骨組みに、他のパートを肉付けする編曲。
ねこびっと作 ♪色泡のはじけ消えるや遠花火 サビ部分。左からピアノ・オルガン・チェロ・ベース・ドラム・シンセ・スネアロール・ストリングス1、2・シンセ・ウインドチャイムのトラック。
KORG Gadget 付属音色は課金しなくても膨大です。ひととおりチェックするだけでも大変ですが、とにかく鳴り・抜けが良い音色ばかりでやたら重ねる必要がなくいつもより少ない音数になりました(これでも)。
音作りの面に関しては、不慣れがもろに出ているのでここは反省点😤音色を選ぶにもいじるにも、もっと使って知るべし…。
音色がイメージとハマった瞬間に出せるオブリガードとかありますからね!
レギュレーションと選評
🔥GadgetSonic 2021🔥
2021年7月31日(土)0:00から応募受付スタート。
3週間に渡る「真夏のトラックメイキング・バトル」いよいよ開幕‼︎
大会レギュレーションは、特設サイトをチェック。
↓
gadget-junkies.net/?page_id=17250
#GS2021 #GadgetSwitch
KORG Gadget だけで作った新曲という条件、応募は指定の音楽共有サービスへアップ。耳だけでレギュレーションに沿っているか判定されてるんですね👂音色結構いじれるのに、聴けば正しくわかるのか…。Gadget-Junkies.net の名に相応しい……。
グランプリ・準グランプリ発表とともに各選評も公開されています。
細かいところまでその曲のツボをしっかり聴き取った審査👂これも耳だけで。 KORG Gadget をどう使って音作り・曲作りをしたか、選評を読んでその曲を聞けばこんなことができるんだなという勉強にもなります。
お疲れ様でした💐
評価に絶対の正解はない中、理論・技術・独創性(個性)等、真剣に審査させていただきました🔥
来年も開催告知されました!
エントリーお待ちしております🏆
本コンペを契機に作家さん同士の繋がりが出来ることを切に願っております✨
本当にありがとうございました❗️
ただ応募して結果発表を待つだけに留まらない、オンラインならではの開催期間中の盛り上げ方・参加者同士の一体感もよかった。有志イベントとは最初気づきませんでした😮
おわりに
これまでと違う新しいやり方で自作曲を完成し受賞しただけでも結構な収穫☺️それに加えて、DTMの今・音楽クリエイターの今・作曲編曲の今、を垣間見た👀✨と思います。
KORG Gadget というツール、GadgetSonic というイベント、面白いです🎵
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「MIDI寄りものづくり ねこびっと通信」内のレタールーム、Twitter@necobitter、necobit.comお問い合わせフォーム でも受け付けております。
それでは次回のねこびっと通信まで、お楽しみに
necobit
オマケ:曲タイトルが五七五なわけ🤭
制作も中盤ごろからモヤモヤとタイトルについて考え始めました。どういうわけか浮かんでは沈みを繰り返すのは、五・七・五、の、リズム。語の前にリズムが出てくるとは???答えは、サビテーマのメロディはじめの3小節を弾いた瞬間に判明したのです………。ぜひ戻ってサビ譜をご覧あれ👀
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