『知見の共有』
先日、ちょっと新しいやつに手を出してみようと、ESP32を実装する基板を考え始めた。(簡単に言うとESP32というマイコンを動作させるためのもの)
まずは基本動作するものを作って、そこから広げていこうと最低限の動作をする回路図をSNSにアップした…ら、なんか面白いことになったのだ。
細かいところは👆コチラのTogetterまとめをお読みいただくとして、
あれよあれよと最初の回路図が広まり、次から次へと集まる有益な知見の数々をもらってとても勉強になった。
誰もマウンティングしない善意100%の指摘
SNSで広まると良くも悪くもツッコミが集まるものですが、不快に感じるものは一つもありませんでした。
ちょっと気になるこの部分を、考えてみたいと思います。
「ただ作ってみたかった」好奇心
製品を開発し販売している necobit ではありますが、今回の回路図は収益性が全く感じられない習作でした。これはノーマウントな結果となった理由としてある気がする。
そもそも既に「ESP32を動かすための基板」は星の数ほど存在します。もし今回の件が necobit が新たに販売する目的で作った回路図だったなら、これほどのリアクションはもらえなかった可能性も想像できます💭
もちろん自分で作ったもので収益を上げることは悪ではない。しかし、ともすれば他人の知識を流用するだけの使い方…いわゆる「クレクレ君」臭の発生もありうる…。そういう意図が嗅ぎ取れないものには、周囲もアドバイスしやすいのかもしれません。
とにかく自分で回路図から作ってみたかった。ただそれだけの単純な好奇心に、みんなが集まってきたということでしょうか。
「シンプルな実験回路」で広がる意見交換
ESP32を動作させるための回路という目的のわかりやすさ。回路図そのものもパッと見て分かるほど単純。
左:シンプルな回路図 右:多機能な回路図
センサーや画面表示などなど色々な機能が詰め込まれている回路図は、まず全体像を読み取るのに時間がかかる。さらに、その作者がどういう意図で各機能を接続しているのか理解しなければつっこみようにもツッコめなかったりする。
まるで教科書例題のようなシンプル回路であれば、その上での問題点や落とし穴が見えやすくなります。
複数人がSNSで意見を出し合い会話しても論点がズレないで話が進んだ、ということも興味深い特筆ポイントと言えましょう。
「落としあな経験者」の多いモジュール
このことも、ついアドバイスしたくなる要素ではなかったかと思います。
今でこそ情報も使う人も増えたESP32というマイコン…
市販されている製品には説明があるものサポートがあるものと思うのが常ですが、電子工作界隈そうでもないこともあるあるです。
新しいモジュールが発売される→買って使ってみる→解決策がわからないバグにはまる
そこで😬ええぃこの不良品め!ポイっ🗑とならない人が多いのもこの界隈です。開発が滞ったり試作品が壊れたりしながらも、試行錯誤して解決策を見つけ情報を集め…。発売メーカーと直接やりとりして不具合を解決していく例も少なくありません。
...というわけで今回の件も「もう誰かが痛い目に遭うのを見るのはつらい」という経験者の心理が働きやすかったのかもしれません。
「傍目で見ててもおもしろい」リアルタイム更新
連投が功を奏したことも挙げられます。アドバイスもらったら速攻で修正してこんなかな?こんなかな?と更新していきました。
この一連の流れをまとめたものは、直接参加していた人達からさらに外にも広まりました。(電子工作勢ってまだまだそんなに居たんだな…と驚きも)
「正解に対してアプローチする」ジャンル
さて。
ものすごく盛り上がったにも関わらず、マウンティングや荒れる炎上方面に向かわなかったのは何故か?
これまで挙げてきたことは、電子工作以外のことにも置き換えて考えることができると思います。ひとつ電子工作というジャンルならでは理由も。
アートや音楽の世界と違って、電子工作には確かな正解があります。不正解ならばそれは動作しなかったり、意に沿わない動作をするものとなってしまいます。
しかし!その正解に向かうための道筋には実に多くの選択肢があるんです。千差万別、十人十色…🤖ロボコンなど分かりやすい例でしょうか?出場するのはみんな同じ目的で作られたロボットのはずなのに見た目も機能の使い方も実に様々ですね。
目的に向かってどういうアプローチを選ぶか。ミスを指摘するだけのアドバイスも当然ありましたが、そこにさえも「俺の考えた最強の〇〇」で培われてきたその人の知見の積み重ねが垣間見えるのです。
こんな方法もあるのか💡なるほど度の方が強い。それで、参加者の誰かがムッとする展開にもならず良い方に向かったと思います。
価値を共有する
ノウハウというものはそれそのものが価値である。と言って良いでしょう。
それをホイホイと他人に与えるものではないという考え方もある一方で、ノウハウを共有してみんなで楽しいものを作ろう!という今回のような流れもある。これはどちらが正解と決めるものではないのでしょうが…
オープンに知見を共有した場合は、爆発的に膨大な手が加わって「同じものをみんなで分け合う」以上の知見に発展することもあります。クローズドな共有でも起こり得るとはいえ、その勢いと予想外な広がりはオープンな流れには敵いません。
📌今回のポイントはココかな。ただ分け与えられるだけの知見で終わらない流れ。
電子工作ジャンルでなくても当然このような流れはあるでしょう。なんでもこんなふうにいい感じでまとまるわけではないけど、一つの貴重な体験として心に留めておくべきと思います。
ただし!
知りたいと教えて欲しいは紙一重
勘違いしちゃだめだなーといつも思うのは、SNSで繋がっている人・ネットでノウハウを解説公開している人は便利な辞書ではない!ということです。
「何か分からないことがあったら質問する」それは全く悪いことではありません。
でも「分からないところだけ」をピンポイントで出し、ここ教えてくれればいいからと言うのは、ちょっと違うのではないでしょうか。
あくまで今自分がこんな作業をやっていてこれこれこういうところでつまづいている〜!というのを開示して、その時に偶然それを見ていて知見を持っていてちょっと手が空いていて気が向いた人がなんとなく手を貸してくれる。これくらいがちょうど良いのではと思います。
🤔単に仲良し度の問題では?…いやいやそうではなく
何を作ろうとしているのか・その為にどういうことをしてきたのか・持っている能力や環境はどんなもんか、これが見えないと質問された方も答えに向かう道が選べません。前述のとおり、正解が一つでも複数でもそこへのアプローチは無限と言っていいほど存在するからです。
SNSの利点は自分の露出にある
普段から自分の作ったもの・作りたいもの・考えなどを露出していれば「なんか作っている人」という見られ方をする事が増えます。ここに完成度は関係ありません。
普段からのアウトプットがあることで、どこからともなく同じようなことをする人が集まっていき自然と意見が交わされるようになる。これが今回の怒涛のアドバイスです。
それと…SNSに限らず、感謝というのは大安売りしても価値が下がらない珍しいものなので、何かアドバイスもらったらものでもお金でもなくお礼をするのは大切なことだと思います。
とにかくとりあえずお礼を言うんじゃなくて「お礼を述べること」に対する自分の感情閾値を下げるってことです。
そんなわけで、みんなの知見をかき集めた習作基板。2021年12月現在、製造元から日本へ向かっています。(どういうわけだか)部品が手に入らない今だからこそ、手に入る部品をなんとかして作りたいものを作って楽しみましょう。
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それでは次回のねこびっと通信まで、お楽しみに
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